このページでは、ルーペの倍率、倍率計算方法、一般的に使われているルーペのレンズについてまとめています。
ルーペの倍率について
ルーペは、倍率が高いと構造上、視界(ルーペで見える範囲)がせまくなるためレンズ径が小さくなります。
逆に倍率が低いとレンズ径を大きくすることができますが、倍率は低くなります。
ただ、倍率が高いルーペは、長時間の検査には向いていません。例えると、度数がきついめがねを使用している状態と同じなので、目が疲れてしまいます。
10倍以上で長時間の検査や作業が必要な場合は、実体顕微鏡などで検査や作業がおすすめです。
残念ですが、ルーペの場合、レンズ径が大きく倍率が高くするのは理論上難しく、もしそれらルーペが販売されていたとしても、レンズの中心部しかみえず、レンズ周辺のがゆがんでしまうため、実用的ではなくなります。
倍率が高いルーペの基本
・レンズ径が小さくなる(視野が狭くなる)
・焦点距離(ピントがあう距離)が短くなる
・主な用途:宝石鑑定用、検査用、作業用など
倍率が低いルーペの基本
・レンズ径を大きくできる(視野が広くなる)。
・焦点距離が長くなる。
・主な用途:読書、簡易検査用、作業用
ルーペの倍率計算方法について
ルーペの倍率については、あくまでも計算上の倍率になり販売されているルーペの倍率は目安になります。
そのため、倍率10倍のものが実際に10倍に見えるわけではありません。理由は、人により視力が違うのと使用時の環境(眼鏡を装着したままなど)により倍率が変わるのも理由の1つです。
さらに、倍率の表示は、メーカーによって違います。それは、メーカーによって倍率の基準(許容範囲)が違うためです。メーカーによっては、倍率ではなくディオプター(D)で表示されています。
ディオプターは、ディオプトリとも言われ、単位はDで表示されます。ディオプターは、メートルで表した焦点が合っている被写体までの距離(焦点距離)の逆数と定義されています。
倍率が低いものはあまり影響ありませんが、中国製などは倍率表示がいい加減なものもありますので注意しましょう。
ルーペの倍率計算方法
・倍率=250mm÷ルーペの焦点距離+1
・ディオプター(D)÷4+1
・焦点距離(レンズを通してピントが合う距離)から計算する場合
1000÷D
上の計算式で表示してある+1は、明視(めいし)の距離になります。明視は、目を疲れさせないで見るものをはっきりと見ることのできる物体と目との距離(きょり)のことを言います。光学では一般的に25cmとされています。
特に海外メーカーに多いのですが、メーカーによっては、+1をしないで倍率を計算されている場合もあります。
ルーペの倍率表
ルーペの倍率、焦点距離、カーブ(ディオプター)を表でまとめてみました。
メーカーによっては、倍率の代わりにディオプター(D)が表示されている品物もあります。その場合は以下の表でどのくらいの倍率なのかが理解できます。
以下の表のように、倍率が高くなると焦点距離(ピントが合う距離)が短くなるのがおわかりになると思います。
倍率の計算方法は、D÷4+1または焦点距離から倍率を計算します。
ディオプター(D) | 倍率(x) | 焦点距離(mm) | 焦点距離(inch) |
---|---|---|---|
2 | 1.5 | 500 | 19.69 |
4 | 2 | 250 | 9.84 |
6 | 2.5 | 167 | 6.56 |
8 | 3 | 125 | 4.92 |
10 | 3.5 | 100 | 3.94 |
11 | 3.75 | 90.91 | 3.58 |
12 | 4 | 83.33 | 3.28 |
13 | 4.25 | 76.92 | 3.03 |
14 | 4.5 | 71.43 | 2.81 |
15 | 4.75 | 66.67 | 2.62 |
16 | 5 | 62.5 | 2.46 |
17 | 5.25 | 58.82 | 2.32 |
18 | 5.5 | 55.56 | 2.19 |
19 | 5.75 | 52.63 | 2.07 |
20 | 6 | 50 | 1.97 |
25 | 7.25 | 40 | 1.57 |
30 | 8.5 | 33.33 | 1.31 |
40 | 10 | 27.78 | 1.09 |
50 | 13.5 | 20 | 0.79 |
ルーペで使われているレンズの種類
一般的にルーペに使用されているレンズについてまとめてみました。
ガラスレンズ
上の写真は、安い光学ガラスレンズです。光学ガラスを使用したルーペは、アクリル樹脂のレンズよりは傷に強いですが、レンズが大きくなると重たくなるデメリットもあります。
このレンズは、主に倍率が低い手持ちルーペや倍率が高い検査用ルーペで使用されています。
アクリル樹脂製レンズ
レンズ径が大きい手持ちルーペや作業用のヘッドルーペなど品物の重さを重視するルーペに使われていることが多いレンズです。傷がつきにくいコート(ハードコート)をつけたレンズも増えています。
非球面レンズ
通常のレンズ(球面レンズ)は、倍率が高くなると見えが湾曲してしまうため、それを軽減するために開発されたレンズです。
非球面レンズは、主にプラスチック製のレンズを利用し、周辺まで見るものが湾曲を押さえてみることができます。
メーカーにより品質の差はありますが、非球面レンズを使用しているとは言え、倍率が上がると湾曲が生じ、完全には補正されるわけではありません。
フレネルレンズ
フレンネルレンズは、フランスの物理学者オーギュスタン・ジャン・フレネルによって発明されたレンズで、シートルーペで使われているレンズです。
厚みを減らすために開発されたレンズでレンズを見ると丸いうずまき模様が見えます。安いものは、レンズ上の渦巻きがはっきりと見えすぎて、見づらいですが、日本製のフレネルレンズは、値段は高いですが、レンズ上の渦巻きが薄く見やすい設計になっています。